名古屋地方裁判所 平成元年(わ)1234号 判決 1989年12月07日
国籍
韓国(慶尚南道泗川郡龍見面松旨里五四九番地)
住所
名古屋市南区丹後通四丁目五番地の一
故鉄卸業
長田徳崇こと張徳崇
一九一六年九月二九日生
右の者に対する所得税法違反被告事件につき、当裁判所は、検察官畝本毅出席の上審理し、次のとおり判決する。
主文
被告人を懲役一年六月及び罰金二〇〇〇万円に処する。
右罰金を完納することができないときは、金一〇万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。
この裁判が確定した日から三年間右懲役刑の執行を猶予する。
理由
(罪となるべき事実)
被告人は、名古屋市南区丹後通四丁目五番地の一に居住し、同所において、「長田商店」の名称で故鉄卸業を営んでいたものであるが、自己の所得税を免れようと企て、所得税の確定申告に際しては、所得金額に関する収支計算をせず、適宜の過少な所得金額を計上するところのいわゆる「つまみ申告」を行う方法により、所得の一部を秘匿した上、
第一 昭和六〇年分の実際の総所得金額が一億一六二五万二四八一円であり、これに対する所得税額が六八七五万九八〇〇円であるのに、昭和六一年三月一四日、名古屋市熱田区花表町七番一七号所在の熱田税務署において、同税務署長に対し、総所得金額が二五一九万八七三九円であり、これに対する所得税額が九四二万四〇〇円である旨の虚偽過少の所得税確定申告書を提出し、正規の所得税額との差額五九三三万九四〇〇円(別紙(1)脱税額計算書参照)を免れ
第二 昭和六一年分の実際の総所得金額が三四七六万九九〇八円であり、これに対する所得税額が一五〇〇万一〇〇円であるのに、昭和六二年三月一三日、前記熱田税務署において、同税務署長に対し、総所得金額が一九三七万四七七三円であり、これに対する所得税額が六四二万五五〇〇円である旨の虚偽過少の所得税確定申告書を提出し、正規の所得税額との差額八五七万四六〇〇円(別紙(2)脱税額計算書参照)を免れ
第三 昭和六二年分の実際の総所得金額が五〇七一万一五一四円であり、これに対する所得税額が二二九六万五四〇〇円であるのに、昭和六三年三月一五日、前記熱田税務署において、同税務署長に対し、総所得金額が一五三七万四八六八円であり、これに対する所得税額が四三三万九八〇〇円である旨の虚偽過少の所得税確定申告書を提出し、正規の所得税額との差額一八六二万五六〇〇円(別紙(3)脱税額計算書参照)を免れ
もって、いずれも不正の行為により所得税を免れたものである。
(証拠の標目)
(なお、以下の括弧のうち、甲又は乙は検察官請求証拠等関係カード記載の分類を、また、これに続くアラビア数字は同カード記載の請求番号を示す。)
判示事実全部について
一 被告人の当公判廷における供述
一 被告人の検察官に対する供述調書(乙1)
一 張龍美(甲29)及び李一順(甲30)の検察官に対する各供述調書
一 呉永重の大蔵事務官に対する質問てん末書二通(甲31、32)
一 大蔵事務官作成の脱税額計算書説明資料(甲7)及び査察官調査書一七通(甲8から10まで、13から26まで)
一 大蔵事務官作成の写真撮影報告書二通(甲27、28)
判示第一の事実について
一 熱田税務署長作成の証明書(甲1)
一 大蔵事務官作成の脱税額計算書(甲4)及び査察官調査書(甲11)
判示第二、第三の各事実について
一 大蔵事務官作成の査察官調査書(甲12)
判示第二の事実について
一 熱田税務署長作成の証明書(甲2)
一 大蔵事務官作成の脱税額計算書(甲5)
判示第三の事実について
一 熱田税務署長作成の証明書(甲3)
一 大蔵事務官作成の脱税額計算書(甲6)
(法令の適用)
一 判示各所為
いずれも所得税法二三八条
一 刑種の選択
所定刑中、いずれも懲役刑と罰金刑とを併科
一 併合罪の処理
刑法四五条前段、懲役刑について同法四七条本文、一〇条(最も重い判示第一の罪の刑に加重)、罰金刑について同法四八条二項
一 罰金の換刑留置
同法一八条
一 懲役刑の刑執行猶予
同法二五条一項
よって、主文のとおり判決する。
(裁判官 鈴木之夫)
<省略>
別紙(1) 税額の計算
△印は減
<省略>
<省略>
別紙(2) 税額の計算
△印は減
<省略>
<省略>
別紙(3) 税額の計算
△印は減
<省略>